会議報告

JANE2006参加報告

上羽牧夫

名古屋大学大学院理学研究科

E-mail:uwaha<at>nagoya-u.jp

 

正式名称は「Japan-Netherlands Symposium on Crystal Growth - Theory and in situ Measurements」.学術振興会とオランダのNWOThe Netherlands Organization for Scientific Researchがスポンサーになった会議で,北大の古川氏とオランダ側はRadboud大のE. Vlieg氏が中心になって組織された.今回の会議は3回目で,最初は1999年に東北大の塚本氏らが日蘭修交400年記念にあやかって始めたもので,2回目は2002年に仙台の秋保温泉で開かれている.

 会場はアムステルダムから特急列車で1時間ほど南に行ったスヘルトヘンボスという町の近郊の「Guldenberg会議ホテル」という,林に囲まれたし閑静な場所で,数十人の規模に会議を開くには理想的なところである.

 内容は22件の招待講演と16件のポスター発表からなり,基礎から応用までの広い範囲に及んでいる.この種の全分野をカヴァーした小さな会議の良いところは,ふだんパラレルセッションのため聞く機会がない他分野の話がじっくり聞けることである.時代の流れで「ナノ」が表題に入ったものもいくつかあったが,むしろindustrial crystallization的な話が新鮮に感じた.いつも思うことだが,オランダは小国ながら結晶成長の研究が盛んで基礎から応用までのバランスもよい.

 その中でとくに印象に残った講演はA. van Blaaderen(ユトレヒト大)の「Mimicking Ionic Crystals with Colloids」だった.1999年の会議でのコロイド結晶でエピタキシャル成長を実現する話が面白かったので期待していたが,今回は大きさの違う2種類のコロイド粒子を使って,いろいろな結晶構造を自由自在に作り上げていた.その成長の様子が共焦点顕微鏡を使って「原子レベル」で3次元構造が見えるのだからショッキングだ.やはり直接目に見えるものは人の心を動かす.塚本氏による位相シフト顕微鏡でのタンパク質2次元核成長中の欠陥導入の観察,M. Rost(ライデン大)によるMBE成長中の表面ラフニングのSTM観察(Seeing thin films evolve with real-time, in-situ STM: film growth and graing)なども衝撃的な映像である.アニメ文化に反発しながらも,その影響には勝てない.

 参加者は小さな会議なので中堅の研究者が多かったが,最終日に長老Bennema氏が会場に現れた.オランダの結晶成長研究を築いた方で,だいぶ前に引退されているが,お元気そうであった.若い世代では,ポスター発表をしていたオランダの学生たちも元気だったが,日本からただひとりの学生参加者Mさん(修士課程在学中)が堂々と講演をしたのが頼もしかった.

 次回は2,3年後に札幌で企画されるようだ.JANEは最初,2回やっておしまいということだったらしいが,3回目もこれだけ充実したものになったのだから,是非続けてほしいものである.