(最終更新 2005/6/23)

講義: 統計物理学 I (後期,2年生)


授業についての質問,意見などは


講義ノートの要約

講義の要約のpdfファイルです. 要点のメモと補足的な内容が書いてあります. Pdfファイル作成の都合上,二つのファイルを用意します. 一つは10ページくらいずつに分けたものでこちらはAcrobat reader によっては一部文字化けがおきるようです. もうひとつはノートの完成したところまでをすべてひとつにしたものでこちらは多分文字化けはおきないと思います.また気づいた誤りは訂正してあります. 51ページ以降は分離したものがソフトの不調でできませんでしたので,統合版を見てください.
興味のある人は新しいものを見てください.

統計物理学I講義アンケート結果


講義日誌(時間反転)

得点分布図
2003年2月17日
 期末試験結果の発表
 例によって甘く採点した.採点誤差はプラスマイナス2-3点で5点単位で採点. 平均点80点で得点分布はグラフのとおり. 85点以上が「優」で46名,65点から80点までが「良」で23名,55点と60点の4名を「可」とした.50点以下の10名は「不可」で,欠席者と合わせて 2003年度前期中に追試験を行うので必ず受験すること.
 内容的には1の(g)と(h),および2の後半のできが少し悪い. 仕事をせずに熱の出入りもないので内部エネルギーは一定(理想気体だから温度も不変). これは不可逆過程なので途中の状態のエントロピーは熱力学的には定義できないが, 最終状態はふたたび熱平衡に達するので状態量であるエントロピーは定義される. (最後の状態から準静的にはじめの状態に戻ることができて,そのエントロピー差が定義できる) このことは準静的過程でエントロピー変化が途中の道筋によらないこととは別です.
 昨年よりも成績はかなり良い. 今年は2回目なので内容もノートも整理され講義は改善されたと思っている. もちろん学生諸君が良く勉強したことは言うまでもないが. (次年度は問題を少し難しくしようか....)



2003年2月4日
 期末試験.履修登録数99名,出席83名(未登録受験者1名).


2004年1月21日
 第13回.講義としては最終回.エントロピーの計算法,理想量子気体の分布関数.
 講義が終わったその足で新幹線に飛び乗らなくてはならないので講義の前に書いておく. 出張から帰ったら書き足すかもしれない.
 試験は熱力学の問題と統計力学の問題の両方出すつもり. 演習問題の復習をやっておけば大丈夫です.

授業後の質問: 黒板に書いた分布関数の和と積分の対応の式が分からない
答え: 積分の方に f(p) が抜けていました. 対応は,
(運動量空間での離散的な和) <---> V x ( p での積分) / h3

講義ノートの訂正: 
P.60 (68), p.61(72): 右辺のマイナスをとる.



Planck    
Planck
2004年1月14日
 第12回.ギブスのパラドックス,状態数の量子力学的数え上げ.
 例年だとホームページに新年の挨拶を載せていたのだが,今年はその暇もなかった. 年々用事が増えて忙しくなる. せめて講義くらいは余裕を持ってやりたいものだ.
 いよいよ次回が最終回です. 今日の話の補足と量子気体の分布関数の話をします. 今までの講義の内容について質問がある人は準備してきてください.

授業後の質問: 演習問題31などで N 個の同種の系だが N ! で割らなくて良いのか.
答え: 2準位系は結晶のようにそれぞれ位置が決まっていて入れ替わることはないと考えているので N ! で割ってはいけない.

授業後の質問: 異種粒子の混合の話では質量が同じことを仮定しているのか?
答え: たしかに仮定していますね.

授業後の質問: N粒子のとき 1/h1/N と黒板に書いたが 1/h1/3N ではないか?
答え: その通り,書き間違いです.



Nernst    
Nernst
2003年12月24日
 第11回.位相空間の体積と微視的状態数との関係,統計力学の基本仮定,熱力学の第3法則,鞍点法とスターリングの公式,統計力学による理想気体のエントロピーの計算.
 やっと統計力学でエントロピーが計算できます. ただ結果が間違っているの残念ですが,次回ギブスのパラドックスで解決へ. このあたりのところは統計力学の基礎と量子力学の基礎の深い結びつきを示している.

授業後の質問: スターリングの公式で (2p n ) 1/2 は大きな数なのに無視してよいのか? 対数をとるから?
答え: その通り. 対数をとって主要項に対し 1/n や 1/n ln(E/DE) の項は無視している.

授業後の質問: ln n! = ln(n/e) と黒板に書いたが...
答え: もちろん書き間違いです.おかしいと思ったら声を上げてください.

講義ノートの訂正: 
P.52 (9): t ---> x
P.54, l.8, l.9: T = ---> T = 0
P.55, (26): hN ---> h3N
P.55, (28): h ---> h3
P.56, (30): h ---> h3
P.55, (33): hn ---> h3N
P.55, (34): hN ---> h3N



Gibbs    
Gibbs(old) 2003年12月17日
 第10回.ファンデルワールス気体でのジュール・トムスン効果,熱力学的安定性の条件,ルシャトリエ-ブラウンの原理,古典力学における微視的状態,位相空間の体積.
 ルシャトリエ-ブラウンの原理の証明はたとえば,キャレンの「熱力学」や久保の「大学演習熱学・統計力学」などにある. 熱力学は一応終わって,ここから統計力学へ.

授業後の質問: 調和振動子で位相空間の体積と面積がわからない?
答え: 講義で出した例は位相空間が2次元なのでEより小さいエネルギーの領域の面積とそれを囲む曲線の長さのこと. 一般には 6N 次元空間の体積とエネルギー E を決めたときの (6N-1)次元の超曲面の「面積」です. 次回にもう一度説明します.

講義ノートの訂正: 
P.49: (72) (73) 2次の項全体に 1/2 がかかる.(板書でも落ちていました)
P.49: (74) (75) v ---> V



2003年12月10日
 第9回.理想気体のヘルムホルツ自由エネルギー,エンタルピー,ギブス自由エネルギー,マクスウェルの関係式,ヤコビアン,ジュール・トムスン効果.
 今日はこのあとM1セミナーをやって新幹線で東京へ,ああせわしい.

授業後の質問: 体積変化以外の可逆的な仕事とは何か?
答え: ゆっくり電場や磁場をかけるとか... 力学的なものはかき混ぜることになるからみんな不可逆かな.

講義ノートの訂正: 
P.45: (41) の前 U (T, V) ---> U (S, V)
P.59: (59) 右辺を CV で割る.



Euler     
Euler
2003年12月03日
 第8回.二つの系の平衡条件,大域平衡と局所平衡,ギブス・デュエムの関係式,エントロピー最大の原理,熱力学ポテンシャルとしてのエネルギーとエントロピー,ルジャンドル変換,ヘルムホルツの自由エネルギー.
 エントロピーが分かればあとは熱力学ポテンシャルの扱い方. 条件に応じて便利な量をうまく操るという技術と思ってもよい. ヘルムホルツ自由エネルギーは統計力学とのつなぎとして大切です. また自由エネルギーが下がる方向に変化するというのもわかりやすいでしょう・

授業後の質問: 化学ポテンシャルとは何か?
答え: これはまだ「粒子をひとつ付け加えるために必要な仕事」としか説明していません. 最初から熱力学の変数をあまり増やして議論をややこしくしないためです. そのうち詳しくやりますのでとりあえずこの説明で我慢してください.

講義ノートの訂正: 
P.38: (87) s ---> s0   ( S0 とs0 の関係は S0 = NkB s0 )



Boltzmann     
Boltzmann
2003年11月26日
 第7回.理想気体のエントロピーの計算,ボルツマンのH定理,量子力学版のエントロピー増大の法則の証明,位相空間の体積と微視的状態数.
 エントロピーが何かという問題は,統計力学のある意味で根本的な問題である.これを通じて一般的な現象論である熱力学と微視的な世界の法則をつなぐことができる. 原子論さえ充分に確立されていなかった時代にこれを成し遂げたボルツマンは統計力学の父と呼ぶにふさわしい.
 講義についてのアンケートを実施した.回収数は56 (出席者は65くらい).結果はここに

授業後の質問: エントロピーと熱容量の間には関係があるか? エントロピーの次元は?
答え: dQ=TdS だから,たとえば CV=dQ/dT=T dS/dT. エントロピーはエネルギーを温度で割ったもので単位は J/K (ジュール/ケルヴィン).

授業後の質問: f ln(f) を本当にエントロピーと言ってよいのか?
答え: ボルツマンの H は熱平衡速度分布を入れるとエントロピーの式に対応するから不定定数の問題はあるが -H をエントロピーと呼べる. 量子力学版もOKで,速度分布関数で書けなくてもかまわないのでこちらのほうが一般的です. ただし両方ともいろいろな原理的問題を抱えてはいます. あ,これでは次元があいませんね. kB を付けておきましょう!

講義ノートの訂正: 
P.29: (43),(59),(51),(52) 第2項の符号いずれもマイナスではなくプラス.
P.29: (48) NkBT --> NkB
P.32: (63),(64)で,すべて右辺に kB をかける.



Clausius     
Clausius
2003年11月19日
 第6回.理想気体のカルノーサイクルの定量的な話,一般の可逆過程とエントロピーの定義,熱力学の第2法則,熱機関の効率,エントロピー増大の法則.
 エントロピーの定義,第2法則などは熱力学で一番難しい(そして分かると面白い)ところだ. 熱力学の議論をあまりていねいにやろうとすると時間を食って流れが見えなくなりがちなので,あらすじを話した. くわしい「精密な」議論に興味のある人は熱力学の教科書を読んでください.

講義ノートの訂正:  P.26: dQに --> dQに対し.



Carnot     
Carnot
2003年11月12日
 第5回.理想気体の等温膨張と等温圧縮,完全微分について,熱力学の第1法則,理想気体の断熱変化,最大仕事,循環過程,カルノーサイクルのあらまし. 「準静的過程」や「断熱過程」について復習し,熱力学の第1法則を説明した. 仕事は100パーセント熱に変えられるが,熱エネルギーから仕事を取り出すのはなかなか難しい. その限界を明らかにしたのが熱力学の第2法則だ. 理想気体のカルノーサイクルはそれを定量化する鍵となる過程である.
 講義ノートの残り25部ほど. 講義は聴かなくても自分でしっかり勉強することが大事です. ただし私の経験から言うと,何か新しいことを勉強しようとするとき,最初に講義を聞いて概観を持つのが一番効率的な方法.

授業後の質問: 箱にはいった気体の温度を上げるとき,かき混ぜてやるとdQ=0 だが,暖めてやればdW=0 ではないか?
答え: その通り. 可逆的に変化させるときdQ は最大になる. つまり,(ゆっくりと)暖めるという操作は可逆変化で,ゆっくりと冷やせば外界の状況も含めて原理的には元に戻る. 今の加熱の場合にはdW=0で,このとき系がする仕事 -dW は最大となっている. (これ以外の場合は系は仕事をしてもらうことになる:-dW<0)

演習問題の訂正:  18.(a): 不等号の向きが反対.



van der Waals     
van der Waals
2003年11月5日
 第4回.理想気体の熱容量,ビリアル展開,ファンデルワールスの状態方程式,温度と圧力による体積変化,可逆過程と不可逆過程,断熱変化と等温変化. 簡単なファンデルワールスの状態方程式が気体と液体の広範な現象を統一して説明できることを紹介した. また「準静的過程」や「断熱過程」について詳しく解説した. 準静的過程の概念は熱力学にとって中心的な位置を占めるものである. これが理解できないと熱力学はただ偏微分で物理量を結ぶだけのものになってしまう. また統計力学との関係で断熱過程を「非常にゆっくりとした変化」として捉えることが大切なのだが,力学でも量子力学でも「断熱変化」はあまり教えられていないようだ.

授業後の質問: 可逆過程の説明で「外界に変化を残さない」とはどういうことか?
答え: 系を元に戻したときに,仕事や熱量などの「借り」(「貸し」)を元に戻せるということ.

講義ノートの訂正:  P.16,(43)式: v --> V.



Mayer     
Mayer
2003年10月29日
 第3回. 混合気体での熱平衡,いくつかの状態変数について,仕事,SI単位系について,熱とエネルギーの同等性. 混合気体で両種の分子の平均運動エネルギーが等しくなることと物理量の単位系について詳しく解説した. 単位系の定義の歴史は物理学の歴史をそのまま反映していて面白い. 出席者は72名ほど(?).

授業後の質問: 弾性衝突について慣性中心系で書いた式は結果の導出に必要か?
答え: 慣性中心の速度の式と相対速度の式があればよいのでなくてもよい. nV によらず全くばらばらだということが分かってもらえればよい.

授業後の質問: d と d はどう使い分けているのか?
答え: 完全微分かどうかということを意識しているが,その区別はまだ説明していないので今は区別しなくてかまわない.

授業後の質問: ハミルトニアンの平均とはどういう意味か?
答え: 孤立系ならばエネルギーは保存するのでそのエネルギーの値. 一般には全エネルギーは外界との出入りがあるので揺らいでいる. その時間平均の意味. そのうち別な意味の平均も出てくるが今は時間平均と考えてください.

講義ノートの訂正:  P.11,(27)式:FaA は Fa



Maxwell     
Maxwell
2003年10月15日
 第2回. 理想気体の状態方程式と気体分子運動論,ボルツマンの測高公式を使ってのマクスウェル速度分布の導出. 速度分布則を最初に導いたのはマクスウェルです. 導出法は教科書に書いてあるものに近い抽象的な推論なので(講義ノートにも書いたようにマクスウェルは良いが教科書の議論は正しくない),測高公式を使ったものを講義では紹介した.
来週は出張のため休講にします.  補講をやるかどうかは進度を見て判断します.

授業後の質問: dNの式がよく分からない.
答え: 容器全体の粒子数がN,そのうち速度 v の粒子が壁の面積 A にぶつかれる平行6面体の範囲にあるものの割合が dV/V,さらにそのうち速度 v を持つものの割合が f(v)d3v ということです.



2003年10月8日
 第1回. 授業の進め方の説明と序論,熱力学の第0法則まで. 講義ノートをプリントで配る. 残り部数から見ると出席者は82名ほどか. 教科書をまだ買っていない人がかなり多い(教卓周辺に座っている人たちは持っている人が多い!). 各教科,最低1冊の本をじっくり読むことは必要なので持っていて欲しい.

授業後の質問: 「熱平衡にするために放置しておく」とはどういうことか? 定常状態と平衡状態はどう違うのか?
答え: 「放置しておく」というのは同じ環境を維持するために一生懸命努力するということです. 孤立系なら何もしなくても良いのでしょうが,そうでない場合には温度を一定に保つなどの努力が必要. 定常状態には電流を流したままの電線,高温の物体と低温の物体の仕切り(熱が一定の割合で伝わっていく)などがあります. 流れがあることが定常状態の特徴です. 閉じた箱にはいった平衡状態の水と水蒸気で水の部分だけを考えると,蒸発して出て行く分子と気相から入射してくる分子があり,粒子の出入りはあるが流れはないのでこれは平衡状態です.



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