(最終更新 2007/05/29)

講義: 統計物理学 I (後期,2年生)


Helmholtz(2004.8.7, フンボルト大学にて) Helmholtz

授業についての質問,意見などは


講義ノートの要約

講義の要約のpdfファイルです. 要点のメモと補足的な内容が書いてあります.
  1. 目次,0, 1.1-1.7 (pp.1-20) (pdf file, 143KB, 04/11/09修正版)
  2. 2.1-2.7 (pp.21-38) (pdf file, 133KB, 04/12/07修正版)
  3. 3.1-3.8 (pp.39-52) (pdf file, 113KB)
  4. 4.1-4.5 (pp.53-68) (pdf file, 152KB)
  5. 統合版 (pp.1-68) (pdf file, 349KB) 統合版の旧いノートがダウンロードされているようなので2004年版にかえてここにおいておきます.

講義日誌(時間反転)

得点分布図
2005年2月19日
 期末試験結果の発表
 やっと採点と成績入力を終えた. 5点単位で採点し,110点満点,平均点56点で得点分布はグラフのとおり. (一部の人に5点おまけをつけた.最高点は115点.) 成績は極端に分極している. 80点以上が「優」で32名,50点から75点までが「良」で16名,35点から45点の12名を「可」とした.30点以下の27名は「不可」で,欠席者と合わせて 2005年度前期中に追試験を行うので必ず受験すること.



2005年2月16日
 期末試験.履修登録数102名,出席87名(回収答案数による).



world year physics



2005年2月2日
 第13回.講義としては最終回.理想量子気体の分布関数.
 統計力学は古典力学の最後を飾るものとして生まれ,その枠組みの中で黒体輻射の問題を解決するために量子力学が構築されることになった. その統計力学が量子力学なしでは出発点が築けないという矛盾は科学の構造を示していて面白い. 量子力学のもたらした新しい考え方の一つに,「同種粒子は全く同じ」ということがあり(粒子は波でもあるということの帰結),そのことを目に見えるようにしてくれるのが低温での量子気体である. 詳しいことは,もう少し道具立てをそろえてから学ぶことになるがとりあえず何がおきるかだけを解説した.
 今年は例年に比べ質問が少なかった. よく理解しているからだといいのだが...  試験は熱力学の問題と統計力学の問題の両方出すつもり. 演習問題の復習をやっておけば大丈夫です.



Planck    
Planck
2004年1月26日
 第12回.ギブスのパラドックスの続き,状態数の量子力学的数え上げ,フェルミ粒子とボース粒子について.
 いよいよ次回が最終回です. 今日の話のつづきで量子気体の分布関数の話をします. また最後の講義なので今までの講義の内容について質問がある人は準備してきてください.

講義ノートの訂正: 
P.59: (37)式,指数にあるふたつの N はいらない.



Nernst    
Nernst
2005年1月19日
 第11回.位相空間の体積と微視的状態数との関係の復習,熱力学の第3法則,鞍点法とスターリングの公式,統計力学による理想気体のエントロピーの計算. ,ギブスのパラドックス.
 久々の講義なのでまず復習から. ボルツマンの公式を使ってやっと統計力学でエントロピーが計算できます. 量子力学を使って位相空間の体積を微視的の数になおすところがミソ. ただ結果が間違っているの残念ですが. まだ量子力学を充分に使っていないのです.ギブスのパラドクスの解決は次回に. このあたりのところは統計力学の基礎と量子力学の基礎の深い結びつきを示している.



2003年12月17日
 第10回.位相空間の体積と微視的状態数との関係,統計力学の基本仮定.
熱力学は一応終わって,ここから統計力学へ. ボルツマンはH定理のエントロピー増大の法則の「証明」を擁護するため,微視的な状態や確立の概念を持ち込み統計力学の基礎を作った. ボルツマンの公式微視的ハミルトニアンから熱力学的諸量を計算することが原理的には可能になる.

来年の最初の1/12の講義は出張のため休講です.

Euler     
Euler
2004年12月15日
 第9回.大域および局所平衡,ギブス・デュエムの関係式,ギブス自由エネルギー,マクスウェルの関係式,ヤコビアン,熱力学的安定性の条件,ルシャトリエ-ブラウンの原理.
 前回飛ばしたところの一部をやってからギブス自由エネルギーの話しに.少し急いでやったので,進度の点では見通しがついた. はじめの予定表ではあと5回あるが1月12日は出張のため休講なのであと4回です. 次回からは統計力学的な話しに入る.

授業後の質問: 2相の平衡条件の話と壁に仕切られたときの平衡条件の関係が分からない?
答え: 一般的な平衡条件は,熱が伝わってエネルギーの移動がおこり,押し合いをしてそれぞれの体積が変わり,壁に抜け穴があって粒子数が変わるという場合で,エントロピーが極値をとる条件として,温度,圧力,化学ポテンシャルが等しいという結果になる. それぞれの量のやり取りがなければ対応する平衡条件は要りません. 壁が熱を伝えなければ温度は違ってよいし,壁が動かなければ圧力は違ってよいし,粒子の移動がなければ化学ポテンシャルが等しくなくてよい.
授業後の質問: ある本に dU = dQ - PdV と書いて「第1法則を微分形式で表した」と書いてあるが...
答え: 微少量の関係を微分の形に書いたという程度の意味でしょう. 注意して欲しいのは,講義では dQ とか dW などと書いたことで,これはある状態の熱量とかある状態の仕事という量が存在しないからです.

講義ノートの訂正: 
P.79: (79)式,(80)式の2次の項にはすべて1/2がかかる.
P.79: (81),(82) v ==> V .



Gibbs    
Gibbs(old) 2004年12月08日
 第8回.エントロピー最大の原理,熱力学ポテンシャルとしてのエネルギーとエントロピー,ルジャンドル変換,ヘルムホルツの自由エネルギー,エンタルピー.
 台風休講の後遺症で演習に講義が大きく遅れそうになっているので,途中を飛ばして熱力学ポテンシャルの話しに入ることにした. おかげで講義ノートの印刷が間に合いませんでした.来週配ります. 飛ばしたところはこれからの講義の中の適当な場所に挿入します.

Boltzmann     
Boltzmann
2004年12月1日
 第7回.カルノーサイクルの復習,理想気体のエントロピーの計算,可逆熱機関の効率,ボルツマンのH定理,量子力学版のエントロピー増大の法則の証明,位相空間の体積と微視的状態数.
  エントロピーが何かという問題は,統計力学のある意味で根本的な問題である.これを通じて一般的な現象論である熱力学と微視的な世界の法則をつなぐことができる. 原子論さえ充分に確立されていなかった時代にこれを成し遂げたボルツマンは統計力学の父と呼ぶにふさわしい. 講義の最後の量子力学の話は難しかったと思います. 量子力学を理解してからもう一度振り返って考えてください.

講義ノートの訂正: 
P.25,l.12: (20) ==> (23)
P.25,l.13: V3 などを V3 などにする.
P.28,(40)式: dQ/dT に V一定 の条件をつける.
P.29,最終行: dS おけばSは状態量で積分すれば(47)ある. ==> dS とおけばSは状態量で,積分すれば(47)になる.



Carnot     
Carnot

2004年11月24日
 第6回.理想気体のカルノーサイクルの話,一般の可逆過程とエントロピーの定義,熱力学の第2法則,熱機関の効率,エントロピー増大の法則.
 エントロピーの定義,第2法則などは熱力学で一番難しい(そして分かると面白い)ところだ. 熱力学の議論をあまりていねいにやろうとすると時間を食って流れが見えなくなりがちなので,あらすじを話した. くわしい「精密な」議論に興味のある人は熱力学の教科書を読んでください. 授業の後の質問を聞くと,かき混ぜて温度を上げるとき黒板で2点を矢印でつないでしまったことが誤解を招いたようなので次回もう一度言います. 今から名古屋駅へ向かうのでとりあえずこれだけ.



Clausius     
Clausius 2004年11月17日
 第5回.断熱変化と等温変化,完全微分について,熱力学の第1法則,理想気体の等温膨張と等温圧縮,理想気体の断熱変化,最大仕事,循環過程,カルノーサイクルのあらまし. 「準静的過程」や「断熱過程」について復習し,熱力学の第1法則を説明した. 仕事は100パーセント熱に変えられるが,その逆をやろうとすると限界がある. 「最大仕事」,「最小仕事」と見る立場,定義によってゴチャゴチャするが,このことが分かっていればどちらか判断できるでしょう.

授業後の質問: dU=dW + dQ の関係は dU が負のときでも成り立つか?
答え: 符号を含めてエネルギーが増えるときでも減るときでも,最大仕事,最小仕事の主張は変わらない. つまり,可逆的に変化させるときdQ は最大になる. ここでは dW は系のエネルギー変化と一致するようにとってあるので, われわれが系に対してする仕事になっていることに注意してください. このとき系がする仕事は -dW .



van der Waals     
van der Waals
2004年11月10日
 第4回.理想気体の熱容量,ビリアル展開,ファンデルワールスの状態方程式,温度と圧力による体積変化,可逆過程と不可逆過程,断熱変化と等温変化. 簡単なファンデルワールスの状態方程式が気体と液体の広範な現象を統一して説明できることを紹介した. また「準静的過程」や「断熱過程」について解説した. 準静的過程の概念は,理論的な極限を考えることで現われる抽象的なものだが,熱力学にとって中心的な位置を占めるものである. これが理解できないと熱力学はただ偏微分で物理量を結ぶだけのものになってしまう. 統計力学との関係では断熱過程を「非常にゆっくりとした変化」として捉えることが大切である. 力学や量子力学で「断熱変化」はあまりていねいに教えられていないようだが考え方をしっかり理解しておくこと. 朝永振一郎著「量子力学I」に詳しい説明がある.

授業後の質問: 量子力学では箱の体積を増やしたとき状態がとびとびに変わるのではないのか?
答え: むしろ古典力学なら反射によって別なエネルギーの状態に飛ぶ. 量子力学では箱の大きさを瞬間的に次々変えたと思っても良いが,これを無限に細かくやるとシュレディンガー方程式に従う連続的な変化になり一定の量子数の状態をたどる変化になる. このときエネルギーは壁を通して出入りしている.

講義ノートの訂正:  P.15,(42)式: +V(N/V)2 ==> +(N/V)2



Mayer     
Mayer
2004年10月27日
 第3回. 混合気体での熱平衡,いくつかの状態変数について,仕事,SI単位系について.
混合気体で両種の分子の平均運動エネルギーが等しくなることと物理量の単位系について詳しく解説した. メートル法の創始はフランス革命で高揚した合理主義の精神であった. その後の単位系の定義の歴史は物理学の歴史を反映している. 現在の定義は量子力学と相対論の時空認識に基づいている. キログラム原器をなくすためには量子力学の物質理解だけでなく,結晶成長に関連した技術のもう一段の進歩が必要だろう.

授業後の質問: n(z)f(vz)dzdvz = n(z')f(v'z)dz'dv'z は何を意味しているのか?
答え: これは位相空間のある領域にある粒子数についての関係で,時間がたっても粒子が消えてなくなったりはしないということを表しています.

2004年10月20日
 第3回できず. 台風のため突如休講. 私のところには9:11に「台風23号の接近によりこの地方に暴風警報が出されました。つきましては本日2時限目以降の授業は教養教育院、学部、 MC授業については休講となります。」というメールが入った.いろいろ調べたところ「暴風等の警報が発令された場合における学生の授業等の扱いは、原則として「 Students Guide 2004 全学教育科目履修の手引」の中にある「地震又は台風等による災害が発生した場合若しくは発生のおそれがあり警報又は注意情報が発令された場合の全学教育 科目の授業及び定期試験(追試及び再試を含む。以下「授業等」という)の対応」によるものとする。」という文書を発見. 学生諸君も知らなかったでしょう. ずぶ濡れになって出てきた人もいたし,私も是非やりたかったのだが授業を断念した.

講義ノートの訂正
P.6,l.11:「熱膨張率は気体の種類温度によらない」は 「気体の体積は温度に比例する」の誤りです. 講義のときにもノートにつられて同じことを口走ったが,賢明な皆さんは気づいたことでしょう.



Maxwell     
Maxwell 2004年10月13日
 第2回. 理想気体の状態方程式と気体分子運動論,ボルツマンの測高公式を使ってのマクスウェル速度分布の導出の途中まで.
リューヴィルの定理を誰も知らないというので速度分布の導出が終わらなかった. それならば次回はマクスウェルの抽象的な議論を使おうか.
ここまで書いて,「授業内容予定一覧」をみるとリューヴィルの定理が解析力学Iの内容に書いてある. 位相空間の体積が正準変換の普不変量であること,時間発展が正準変換とみなせること,このふたつから時間変化で位相空間の体積が変わらないことが導かれる. 重要な定理なので理解していない人は復習しておくこと.

授業後の質問: 演習問題の平均自由行程の因子ルート2をどうやって出すか?
答え: その因子はマクスウェル分布の具体的な形が必要なので,この問題ではいりません. 興味があれば,久保「大学演習熱学・統計力学」の第10章に書いてあるようです. 気体分子運動理論については次のマクスウェルの原論文にみんな書いてあります. J. C. Maxwell"Illustrations of the Dynamical theory of Gases", Philosophical Magazine (1860). 翻訳が東海大学出版会,物理学古典論文叢書5,「気体分子運動論」にある.

world year physics 来年はアインシュタインの奇跡の年から100年,世界物理年. アインシュタインは非平衡統計力学の端緒となるブラウン運動の理論を作り,ペランによるアヴォガドロ数の測定を可能にしました.



2004年10月6日
 第1回. 授業の進め方の説明. 序論と熱力学の第0法則まで.
講義ノートをプリントで配る. 残り部数が25部ほど.100部あったとしても出席者は75名ほど,若干少ないような気がする. 今年は教科書を指定しなかったので参考書についての説明を詳しくした. 授業後の質問もとくになく,まだどういうクラスなのかよく分からない.



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