(最終更新 2004/04/01)

講義: 統計物理学 II (前期,3年生)


授業についての質問,意見などは

講義ノートの要約

講義の要約のpdfファイルですが,興味のある人は新しいものを見てください.

統計物理学II講義アンケート結果

 


講義日誌(時間反転)

得点分布図
2003年9月17日
 期末試験結果.履修登録数100名,出席89名(あとからの受験者1名を含む).
 5点単位で甘く採点した. 配点は1(b)が5点,1(c)が15点,あとは各10点. 平均点43点で得点分布はグラフのとおり. 約60点以上を「優」,約40点から約55点までを「良」,30点と35点を「可」とし,25点以下は「不可」. 「不可」の者に対しては 2003年度後期中に追試験を行いますので必ず受験してください.
採点した答案(添削はしていない)は事務室で返却します. 解答例は掲示します.
 1の(b)-(e)は問題にあるように量子系です. 古典系でやった人にも部分点を付けましたが,古典系では計算も面倒で,低温の振舞いが間違ったものになる. 2は上の「レポート解答例」も参照.


2003年9月11日
 定期試験.試験が終わるなり「追試をやってもらえますか?」の声. 「それはやりますが....」 問題は少し難しいとは思ったが,講義でやったことそのままと,レポートの出した問題(↑上に答えがある)なのでなんとかなると期待したのだが... 試しに統計Iで100点を取った人たちの答案を見てみるが,得点は20-80点!!
合格ラインをどうするか,採点してから考えます.



2003年7月17日
 第12回.グランドカノニカル分布での粒子数のゆらぎと圧縮率の関係.単純な物質の相図と相平衡の条件,ファンデアワールスの状態方程式と転移点を決めるマクスウェルの規則,化学平衡の条件.
 時間がないので重要だと思われるところのみやった.あとは教科書や講義ノートを読んでおいてください.12コマは少し少ない,あと2コマ欲しい.
 簡単な公式集を配りました.書き込みをしなければ試験のときに使ってもかまいません. 欠席した人は事務室に残りがあるはず. 質問にはいつ来てもらってもかまいませんが,用事があって追い返されることがあるかもしれません. また試験の直前は避けること(教えたくても教えられないかもしれない).

講義ノートの訂正:  P.26,(35)式: sN --> sN/ N,1/V --> 1/√V P.27,(36)式:dU(2) --> dU(1),dN(1)の項の符号をマイナスに.



2003年7月10日
 第11回.グランドカノニカル分布の説明,大分配関数とグランドポテンシャルの定義,それが熱力学でルジャンドル変換によって定義したものと一致すること,理想気体のグランドポテンシャルの計算.
 今回をふくめてあと2回しか講義がないのに,ノートは8ページ分残っている.どうもあせってしまうが,粒子数の揺らぎまでは進めず.細部は教科書や講義ノートであとから分かると思うので全体の構成の説明をていねいにやった. 来週は最後なので内容をかなり精選しないといけない.
 最後の講義ノートのプリントを配ったが,半分残った. このまま試験をやって大丈夫かと不安になる.



2003年7月3日
 第10回.分子の回転(量子力学的取り扱い),分子の振動,粒子の出入りに関する平衡条件,グランドカノニカル分布の導出.
 具体例をていねいにやっていると時間がかかって進まない.講義もあと2回.余裕を持ってできると思っていたが,途中どこかをはしょる必要がありそうだ.
 最後の演習問題を配ったが,ずいぶん残った.出席者は60名弱くらいか. 受講者名簿には100人の名前があるので,何人の人に単位を出せるかと暗い気持ちになる. もちろん出席している人がみな理解しているかは疑問だし,授業に出たことのない人でも勉強している人がきっとたくさんいることも分かる(自分も学生時代に講義に出たことはあまりなかったなあ...,反省すべきことながら). しかし目の前に見えないと不安になるのが人間の自然な心理であろう.

講義ノートの訂正:  P.22,(52)式,(53)式:= --> ≈.P.23,l4 分け ---> 分けて. (2)式,(3)式 「=0」を右に加える. P.24,(8)式 m ---> mR . 



2003年6月26日
 第9回.量子的常磁性体,2準位系での負の温度,2原子分子の古典力学的回転運動.
 演習問題について質問に来た学生が何人かいたので少し解説をした. 今日の夕方が締め切りだと今からでは少し苦しいか. 講義はかなり遅れ気味.

講義ノートの訂正:  P.19,(27)式:T で微分 --> b での微分. P.21,(43)式:エントロピーの式の右辺,最初の T は余計.



Langevin
Langevin 2003年6月19日
 第8回.調和振動子,古典的常磁性体.
 アンケートで具体例が欲しいという声が多かったがやっと例題をやれる. ただ具体例はていねいにやりだすといくらでも時間がかかるので, 要点しかできない. 演習問題に挑戦してください. 考えていた予定より,一回分近く遅れてきた. そのため,一部のクラスで磁性体の講義が演習問題の14,15に間に合わなかった.
 ポール・ランジュヴァンは磁性やブラウン運動の研究で有名なフランスの物理学者. 第2次世界大戦中ナチスの収容所から脱出しレジスタンスで活躍した. 私が滞在したことがあるグルノーブルの欧州共同利用研究所はラウエ・ランジュヴァン研究所と呼ばれている.

講義ノートの訂正:  P.18,(10)式:ΩN --> dΩN. (14)式 N L( x ) --> N m L( x ). 

授業後の質問: 自由エネルギーのなかにあった 4p などの因子はどうなったのか?
答え: 対数をとるとばらばらになり,H で微分すれば消えてしまう. 同じ理由で,運動エネルギーや h の因子があっても結果には関係ない.



2003年6月12日
 第7回.カノニカル分布でのヴィリアル定理,ヴィリアル定理の応用--同次関数ポテンシャル,エネルギーの等分配則,調和振動子系の自由エネルギーの計算.
 最初に,このページで紹介しておいた小林さんのホームページにある調和振動子系のシミュレーションのデモンストレーションを行った. パソコンはLANにはつながっていないのだが,一度つないでおくとcashに残っているので簡単にデモができる.ただアンケートの集計結果を見ようとするとグラフが出てこない.微妙なものですね.
 講義ノートと演習問題を配ったが20部ほどあまる. 90部印刷しているらしいので出席者は70名くらいということか.ちなみに統計Iの追試験の結果10名が合格で合計85人が単位を取得した.内訳は,優30,良36,可19です.
 明日は物理学教室憲章記念日です.教室講演会を聞きに行ってください.

講義ノートの訂正:  P.15,(58)式:左辺にマイナスを付ける. P.17,(2)式と(4)式 eb --> e-b (h はバー付です).(4)式,右側の二つの ln の前に T を挿入.



2003年5月29日
 第6回.相互作用のない系の一般論.カノニカル分布で微視的に定義された物理量が熱力学で導かれるものと同じになることの説明.ヴィリアル定理のミクロカノニカル・アンサンブルでの証明.
 講義の際に昨年の統計Iのものと同様のアンケートをとった.

統計物理学II講義アンケート結果

統計Iのときに比べて全般的な傾向は良く似ているが,難しいと感じる人がかなり増えた. また例題を講義で解説して欲しいという声が多数あった. 今までの講義の内容がかなり抽象性の高いものなので,ある程度はやむをえないと思うがやりすぎだったと反省.

講義ノートの訂正:  P.11,(33)式:和は {ei} ではなく i についてとる.Z(T,N) --> Z(T,1). P.15,(57)式,マイナスをとる.

授業後の質問: 分配関数で Ei について和をとるとき,同じエネルギーの状態がたくさんあったらどうするのか?
答え: 分配関数はすべての微視的状態 i についての和です(エネルギー固有値についての和ではない).したがって同じエネルギーの状態がたくさんあればそれをばらばらに数えなくてはなりません.



2003年5月22日
 第5回.カノニカル・アンサンブルのとミクロカノニカル・アンサンブルの関係. 状態密度のラプラス変換が分配関数であり逆変換によって分配関数から状態密度が計算できること,カノニカル分布でのエネルギーの分布がミクロカノニカルのエネルギー,あるいは平均エネルギーを最大とする鋭いガウス分布になることの説明.
 統計力学の状態和(エネルギーでの積分)の最尤値の評価から熱力学の関係が得られるということは一般性があり重要です. 講義の中でも指摘したように教科書にも誤りがあるので(この講義も同様?)鵜呑みにしないように.
 孤立系がエネルギー一定でミクロカノニイカル分布で記述できるとき,その部分系がカノニカル分布になることの分かりやすいデモンストレーションを,S研の小林晃人さんが作って公開している.小林さんのホームページからJAVA appletのページに行けばカノニカル分布の正しさが体感できます(パソコンにJAVA appletがinstallしていないと見えませんが).

講義ノートの訂正:  P.13,(46)式:右辺の「-」をとる. (48)式:p --> pc. (53)式:分母の DE の D をとる.



2003年5月15日
 第4回.カノニカル・アンサンブルの分配関数とヘルムホルツ自由エネルギーの関係.  カノニカル分布を使っての理想気体の自由エネルギーと熱力学的諸量の計算. アンサンブル平均としていろいろな物理量が計算できること.
 結局,ハミルトニアンの固有値の分布が分かれば自由エネルギーが計算できる.自由エネルギーの式は一見面倒だが,熱的ドブロイ波長の大きさの体積と一粒子あたりの体積の比になっているということは重要.

授業後の質問: 分布関数を考えることと,与えられたエネルギーの微視的状態の実現確率が同じということは矛盾しないか?
答え: アンサンブルはこちらが勝手に選ぶので分布関数は一般には何でもかまわない(ミクロカノニカルやカノニカルである必要はない). しかしエネルギーが決まっているときの熱平衡での最も確からしい分布はミクロカノニカル分布であり,熱浴と平衡にある場合の最も確からしい分布はカノニカル分布であるということ. これはあくまでひとつの近似なのですが,「確からしい」ということは,ある程度大きな系では「命をかけて」と断言できるくらいには確かだということです.



2003年5月8日
 第3回.閉じた部分系の分布がカノニカル・アンサンブルとなること,それがエネルギーの期待値だけを指定したときの最も尤もらしい分布であること.ラグランジュ未定乗数bが期待通り温度の逆数であること.
 pi ∝ ΩR(E-Ei) の説明をしたら,よく分からないという人が大多数であった.そこで説明をしなおしたら分からないという人がいなくなった.2度目の説明が良かったのか,あるいはあきらめたのか... カノニカル分布の核心ですから自分で納得するまで考えてください.

講義ノートの訂正:  P.8,l.1:W は ln W.

授業後の質問: 部分系のエネルギーを指定しても部分系の状態はいくつもあるのではないか? 
答え: その通り.求めたい pi は系が Ei のエネルギーを持つ確率ではなく,ひとつの微視的状態 i をとる確率です. だから,他に縮退した状態があっても関係なく,熱浴の状態数 ΩR(E-Ei) だけで決まるのです.



2003年4月24日
 第2回.ミクロカノニカル・アンサンブルがエネルギー一定で最も尤もらしい分布であること,ミクロカノニカル・アンサンブルでのエントロピーと一般の分布への拡張,エントロピー増大の法則,ミクロカノニカル・アンサンブルの計算例.
 来週は昨年度後期の統計物理学Iの追試験をおこないます(5/1,10:30,B5講義室). 単位をとり損ねた人は必ず受けてください.

講義ノートの訂正:  P.5,l.5:「を」をひとつ削除. P.5, (17)式:lの前の符号を「+」に. P.6, (27)式:最右辺の「-」符号を取る.

Ehrenfest    
Ehrenfest 2003年4月17日
 第1回.統計Iの試験の講評とまとめ. アンサンブルの概念,ミクロカノニカル・アンサンブル,エルゴード仮説,リューヴィルの定理,定常状態の分布の性質. アンサンブル理論は抽象的で難解だが統計力学の一番基本的な概念なので話していても面白い. 分かりやすく話しているつもりだが果たして理解してもらえたか.
 やはり最初の講義は人数が多い.講義ノートや演習問題もほとんど余らないので80人以上いるのでしょう.

授業後の質問: ミクロカノニカル分布関数の d 関数表示の前の因子が良く分からない.
答え: 有限のエネルギー幅 DE をとった場合のものの DE→ 0 の極限をとれば理解できるでしょう. Ω(E) = (∂S/∂E) DE = (1/h)(∂ω/∂E) DE . 最後のDE が逆数をとってDE→ 0 としたときに d 関数に化けます.




RETURN TO HOMEPAGE