(最終更新: 2003/07/18)

講義: 統計物理学W (前期,4年生)


単位は出席とレポートをもとに出します. A4の用紙に書いてB545の扉にあるレポート入れにて提出してください.

レポート No.1 (出題 2003/04/18,提出期限 2003/05/06.pdf file 22kB) 

レポート No.2 (出題予定 2002/05/16,提出期限 2002/05/30.pdf file 29kB) 
訂正: ここに載せたレポートの問題には誤りがあります. 2番目のlTの式は分子と分母が逆です. またこれは古典理想気体ですのでTrace は位相空間の積分です.


授業についての質問,意見などは


講義日誌(時間反転)

Langevin
Langevin 2003年7月18日
 第13回.ブラウン運動のランジュヴァン方程式による解説.
 最後なので時間発展の入った話がしたいと思いLangevin方程式の話をした. 拡散方程式の話を省略したのでアインシュタインの関係式が高分子とのアナロジーに頼ったがきちんとつながらなかった.あとで自分で式を導き,きちんとつないで見ると良いでしょう.
 単位は,2/3以上出席して2回のレポートを提出している人には出します. この条件に少し欠けるが単位が欲しいという人は連絡してください.
 出席16人.



Landau (Nobel財団の写真).
Landau
2003年7月11日
 第12回.ランダウ理論の解説.自由エネルギー汎関数の形,秩序変数,感受率,相関関数の温度変化.
 Landau の写真をもう一度載せます(4/11とは違うもの). ランダウは言うまでもなく,ある年代以上の人にはバイブルとも呼ばれているランダウ=リフシッツ理論物理学教程の著者です. 1962年に超流動ヘリウムの研究などでノーベル賞を受賞した. この年,交通事故で再起不能となる. 私のランダウに関する記憶は,小学校の高学年のとき,世界的な科学者がが交通事故で4回死からよみがえったというような新聞記事を覚えている(もちろん偉大な物理学者であることなどは知らなかった). 高校の修学旅行で九州の汽車の中でランダウの死亡記事を読んだことも覚えている. 中学生のときに読んだ「相対性理論入門」はすばらしい啓蒙書で,物理が好きになるきっかけのひとつであった.
 あと一回.来週は多分ランジュヴァン方程式の話をします.
 出席12人.



Bordeaux wine Bourgogne wine
2003年7月4日
 第11回.秩序状態を統計力学的にどのように記述するか,具体例としての磁性体の相転移.
 空間的に非一様な外場をかけて自由エネルギーをもとめ,それからルジャンドル変換によって磁化密度の汎関数としての自由エネルギーを定義する. 一般化した感受率がこれらの自由エネルギーの2階の汎関数部分として求められる. スピン空間が2次元で回転対称性がある場合には,磁化の関数としての自由エネルギーの形は,すり鉢-->Bourgogne葡萄酒壜底-->Bordeaux葡萄酒壜底と変化する.
 講義もあと2回.例年のことながら予定通り進まない.今年は憲章記念日と重なったのが誤算だった.来週はランダウ理論をやって,最後は,話が飛ぶがランジュヴァン方程式の話でもしよう.
 出席16名.



Flory (Nobel財団の写真).
Flory
2003年6月27日
 第10回.フラクタル構造を持つ高分子の話と秩序状態の例としての磁気相転移の話の序論. 実在高分子のモデルとしてのself-avoidingランダム・ウォーク. Floryの理論の説明.
 出席20名.

補足:  < aiaj > =(1/3)a2dij の導き方.たとえば極座標で,ax = a nx = a sinq cosf , ay = a ny = a sinq sinf , az = a nz = a cosq として,立体角で平均してみれば分かります.



2002年6月20日
 第9回.レポートの解答.スメクティク液晶,フラクタルの説明と高分子の理想鎖モデル.
 「フラクタル」というのは流行の言葉かと思っていたのだが聞いたことがないという人もいた. もう流行はとっくに過ぎてしまったか. しかし意味くらいは知っておいたほうがいい概念であろう. コロイドクラスターから宇宙の大規模構造までフラクタルの現われる「物」はけっこう多いのだから.
 出席者17名.やー減ってきたな...



2002年5月30日
 第8回.固体(結晶)での散乱実験の結果がどういう特徴を持つか,ネマティック液晶の説明.
 固体の説明は物性物理学の講義で3年生のときにやっている人が半数くらいいいるはずなので繰り返しになっていると思う.とりあえずこの程度のことは知っておいたほうが良いと思われることを基礎的なところから解説した.続いて液晶の話.例年のことだが携帯電話やパソコンの液晶ディスプレイはひとり残らず持っているのに液晶のことは誰ひとり知らない.
 出席者22名.

追記(6/12):明日は教室憲章記念日のため講義はありません.教室講演会を聞きに行ってください.

後ろに立っているのがAlder.
Alder(back)
2002年5月23日
 第7回.液体の2体分布関数の説明.剛体球系の結晶化相転移.
 わざわざA4北講義室に場所を変えたのだがスクリーンが降りてこず,プロジェクターを運んでA4南に移動.やれやれ.
 2次元版の剛体球模型を回覧したが完全結晶を作る人はいなかった. 例年ひとりくらいできる人がいるのだが...
 出席者22名.今日は2時間目にコロキウム話をしなくてはいけないので忙しい.



2002年5月16日
 第6回.密度相関関数 < n(r)n(r')> の物理的意味の説明. Legendre変換によって自由エネルギーを局所密度 < n(r)> の汎関数として表す方法.一様等方な場合に相関関数やそのFourier変換がどうなるか.
 汎関数微分になれるよう簡単なレポート問題を出しました.締め切りは5月30日.
 出席者27名.

 来週はOHPを使いたいので隣のA4北講義室を使います.

授業後の質問: 分子間ポテンシャルを書いたが,どこまで近づけば液体なのか?
答え: 液体と気体は対称性が同じなので相図の上でも連続的につながっており,厳密には両方が共存している点でのみ区別ができます.



2002年5月9日
 第5回.レポートの返却と講評(解答例).汎関数微分の説明と外場のもとでの分配関数の汎関数微分を使って密度分布 < n(r)> や密度相関関数 < n(r)n(r')> が書き表せること.
 出席者26名.



2002年5月2日
 第4回.各種相関関数の説明. 物質内の構造を見るには散乱実験が重要な手段であり,散乱断面積は原子のポテンシャルフーリエ変換とと構造関数の積になっている(ここまでは前回話した). 構造関数,構造因子,密度相関関数,密度ゆらぎの相関関数,2体分布関数などの関係を解説.
 連休の間でもあり出席者は25人(内3名がM1). 言い忘れたがレポートの締め切りが5月6日なので忘れないように.
 以下の人たちは仮受講者名簿には名前がありません:進藤剛宏,末岡大典,新里隆,浪花健一,米谷公一,野口浩一. 単位が欲しいのならば必要な手続きをとってください.



構造因子を導入したのは van Hove です.
van Hove

2002年4月25日
 第3回.カノニカル分布の密度行列と物理量の計算法の続き, ゆらぎについての公式と統計力学と熱力学の関係の復習. 出席者は30人.
 レポートについて補足しておきます. 2.で(2)式を書いておいたのは lnr や eiHt の意味をはっきりさせるためです. Bloch方程式の証明にもこれが必要です. (2)を使って f(e-iHtAeiHt) = e-iHt f(A) eiHt を証明しておくと 3.で役に立ちます.

授業の訂正: エネルギー状態密度とエントロピーの関係は D(E) = eS(E)/kB です.板書ではkB が抜けていました.

授業後の質問: 密度行列というがどこが行列なのか?
答え: 正確には,密度演算子(統計力学の分布関数にあたるものなら統計演算子). それを適当なベクトルではさんで表示すれば行列になる. たとえば,理想気体1原子のカノニカル分布を表す密度演算子は, e-bHt. これを運動量の固有ベクトル |k> ではさんで表示すれば, <k| e-bHt |k'> = exp[-(bk2/2m)] dkk' と対角行列になる. 座標表示では,もちろん対角形にはならず行列の成分は <r| e-bHt |r'> = (1/V) exp[-(p (r'-r)2 /l2)] となります( l は熱ドブロイ波長 ).

 皆さん,ここに書かれた数式は読めていますか? レポート問題のpdfも文字化けがあるかもしれません.



Bloch と Gibbs
Gibbs
Bloch
2003年4月18日
 第2回.定常状態にある系の部分系を記述する密度行列としてカノニカル分布の密度行列が最もよさそうな近似であることの説明.Bloch方程式,エントロピーの定義.
 統計力学を基礎付けるのに,Boltzmann流の長時間平均というのはあまりに非現実的,Gibbs流の統計集団はあまりに空想的. 密度行列の考え方をしてはじめてGibbsのアンサンブルの意味が分かる気がします.
 出席者は27名.
 先週は日誌を書き忘れ,次週の講義に前日に記入.けっこうたいへんだ.




Landau と von Neumann(AIPより)
von Neumann
Landau
2003年4月11日
 第1回.部分系の量子力学的な記述法である密度行列の説明. 出席者は24名(ほかにM1が2名).今年は1時限になってしまったからかもしれないが昨年に比べ出席者が大幅に減った.ちなみに第1回目の出席者数は,2000年度26人,2001年度28人,2001年度39人.昨年は最後まで出席者が多く驚いたが,今年が平年並みなのだろうか? 素粒子関係の人が少ないのが気になる.
 密度行列を導入した Landau と von Neumann の写真を載せます(昨年度と同じだけれど).

授業後の質問: 座標表示で書いたのが行列とは...  yi(x)は多粒子系でも良いのか?
答え: 座標の値の順に要素が並んだ連続無限個の成分を持つ行列です. あまり深刻に考えても分からないので,簡単な場合を楽観的に一般化して理解してください. yi(x)は,多粒子系の波動関数です. xとひとつの文字で表したが,3N個の座標のすべてを意味しています.

授業後の質問: 密度行列というものの物理的な意味は何でしょうか?オペレーター r を定義でき、エルミートであることから何らかの物理量として 見てもいいと思うのですが.
答え: 密度行列は物理量というよりは波動関数の一般化です. ランダウ=リフシッツの「量子力学」や「統計物理学」,Feynmanの「Statistical Mechanics」に講義で紹介したものよりもう少し詳しい(?)説明が載っていますので参考にしてください.



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