Helmholtz(2004.8.7, フンボルト大学にて)
2005年2月2日
第13回.講義としては最終回.理想量子気体の分布関数.
統計力学は古典力学の最後を飾るものとして生まれ,その枠組みの中で黒体輻射の問題を解決するために量子力学が構築されることになった.
その統計力学が量子力学なしでは出発点が築けないという矛盾は科学の構造を示していて面白い.
量子力学のもたらした新しい考え方の一つに,「同種粒子は全く同じ」ということがあり(粒子は波でもあるということの帰結),そのことを目に見えるようにしてくれるのが低温での量子気体である.
詳しいことは,もう少し道具立てをそろえてから学ぶことになるがとりあえず何がおきるかだけを解説した.
今年は例年に比べ質問が少なかった.
よく理解しているからだといいのだが...
試験は熱力学の問題と統計力学の問題の両方出すつもり.
演習問題の復習をやっておけば大丈夫です.
講義ノートの訂正:
P.59: (37)式,指数にあるふたつの N はいらない.
2003年12月17日
第10回.位相空間の体積と微視的状態数との関係,統計力学の基本仮定.
熱力学は一応終わって,ここから統計力学へ.
ボルツマンはH定理のエントロピー増大の法則の「証明」を擁護するため,微視的な状態や確立の概念を持ち込み統計力学の基礎を作った.
ボルツマンの公式微視的ハミルトニアンから熱力学的諸量を計算することが原理的には可能になる.
来年の最初の1/12の講義は出張のため休講です.
授業後の質問: 2相の平衡条件の話と壁に仕切られたときの平衡条件の関係が分からない?
答え: 一般的な平衡条件は,熱が伝わってエネルギーの移動がおこり,押し合いをしてそれぞれの体積が変わり,壁に抜け穴があって粒子数が変わるという場合で,エントロピーが極値をとる条件として,温度,圧力,化学ポテンシャルが等しいという結果になる.
それぞれの量のやり取りがなければ対応する平衡条件は要りません.
壁が熱を伝えなければ温度は違ってよいし,壁が動かなければ圧力は違ってよいし,粒子の移動がなければ化学ポテンシャルが等しくなくてよい.
授業後の質問: ある本に dU = dQ - PdV と書いて「第1法則を微分形式で表した」と書いてあるが...
答え: 微少量の関係を微分の形に書いたという程度の意味でしょう.
注意して欲しいのは,講義では dQ とか dW などと書いたことで,これはある状態の熱量とかある状態の仕事という量が存在しないからです.
講義ノートの訂正:
P.25,l.12: (20) ==> (23)
P.25,l.13: V3 などを V3 などにする.
P.28,(40)式: dQ/dT に V一定 の条件をつける.
P.29,最終行: dS おけばSは状態量で積分すれば(47)ある. ==> dS とおけばSは状態量で,積分すれば(47)になる.
授業後の質問: dU=dW + dQ の関係は dU が負のときでも成り立つか?
答え: 符号を含めてエネルギーが増えるときでも減るときでも,最大仕事,最小仕事の主張は変わらない.
つまり,可逆的に変化させるときdQ は最大になる.
ここでは dW は系のエネルギー変化と一致するようにとってあるので,
われわれが系に対してする仕事になっていることに注意してください.
このとき系がする仕事は -dW .
授業後の質問: 量子力学では箱の体積を増やしたとき状態がとびとびに変わるのではないのか?
答え: むしろ古典力学なら反射によって別なエネルギーの状態に飛ぶ.
量子力学では箱の大きさを瞬間的に次々変えたと思っても良いが,これを無限に細かくやるとシュレディンガー方程式に従う連続的な変化になり一定の量子数の状態をたどる変化になる.
このときエネルギーは壁を通して出入りしている.
2004年10月20日
第3回できず.
台風のため突如休講.
私のところには9:11に「台風23号の接近によりこの地方に暴風警報が出されました。つきましては本日2時限目以降の授業は教養教育院、学部、
MC授業については休講となります。」というメールが入った.いろいろ調べたところ「暴風等の警報が発令された場合における学生の授業等の扱いは、原則として「
Students Guide 2004 全学教育科目履修の手引」の中にある「地震又は台風等による災害が発生した場合若しくは発生のおそれがあり警報又は注意情報が発令された場合の全学教育
科目の授業及び定期試験(追試及び再試を含む。以下「授業等」という)の対応」によるものとする。」という文書を発見.
学生諸君も知らなかったでしょう.
ずぶ濡れになって出てきた人もいたし,私も是非やりたかったのだが授業を断念した.
講義ノートの訂正:
P.6,l.11:「熱膨張率は気体の種類温度によらない」は 「気体の体積は温度に比例する」の誤りです.
講義のときにもノートにつられて同じことを口走ったが,賢明な皆さんは気づいたことでしょう.
2004年10月6日
第1回.
授業の進め方の説明.
序論と熱力学の第0法則まで.
講義ノートをプリントで配る.
残り部数が25部ほど.100部あったとしても出席者は75名ほど,若干少ないような気がする.
今年は教科書を指定しなかったので参考書についての説明を詳しくした.
授業後の質問もとくになく,まだどういうクラスなのかよく分からない.