2007年9月02日
レポートを掲載し,成績をつけて事務に提出した.やれやれ.
レポートを出した人には(出席に吸うが少々不足の人もいたが)全員単位は出した.
時間がなく,よく読めなかったものが多いのは残念.
ほんの丸写しに近いようなものは,単位を出すべきか迷ったが,今回はおまけ.
これだけの数のレポートを手作業でwebに掲載するのはかなりの労力です.
ファイル名などが指定どおりになっていないと苦労するので,instructionは注意深く読んで従いましょう.
2007年7月24日
第16回.非保存系での平面界面の運動,1次相転移の後期過程,Ostwald熟成,LSWのスケーリング解
連続界面モデルでは駆動力が小さければ平衡界面の解を並進させたものが近似解となっているので,平衡状態の物理量を使って運動学的係数が表現できる.
これは現実系を分析する上で大切な視点である.
駆け足だったが一応相転移の後期過程までたどることができた.
用意した講義ノートの一部を拾ってやったので話がきちんとつなげないところもあったがノートを見て補ってほしい.
講義中に気づいたミスプリなどはそのうち直しておきます.
半年間の講義で,平衡状態の相転移から非平衡の話までを一通りやるのはなかなか難しい.
お話だけではしょうがないし,丁寧にやると一回の講義ではひとつの問題しかできない.
重要なポイントだけに絞ったつもりだが,どれだけ伝わったか不安だ.
レポートを送るときに,講義に対する意見,感想などもついでに知らせてもらえるとありがたい.
出席者26名(素粒子宇宙9名,物質理学17名).
2007年7月17日
第15回.定常核生成率と臨界核の出現確率の関係,非保存系と保存系での熱力学的運動,平面界面の構造,界面自由エネルギー
BDモデルのような簡単なモデルで,平衡状態の熱力学と,核生成のような準安定状態が崩壊していく動的な過程の関係を考えてみるのは教訓的である.
ポイントは準安定状態では状態空間を制限すれば熱平衡の統計力学,熱力学が使えると言う点だ.
連続体モデルは平衡状態の相転移,非平衡状態の時間発展をともに一般的に統一して扱えるので価値がある.
このあたりの統計物理の醍醐味は,連続と非連続,確率論と決定論,平衡と非平衡の,さまざまに工夫して生み出されたモデルや概念が統合されて相補的に物理世界を記述していくところにある.
騒音を消すため冷房を止めるとほんとうに蒸し暑い.あと一回,もう少しの辛抱だ.
出席者34名(素粒子宇宙10名,物質理学24名).
2007年7月10日
第14回.BDモデルの係数の評価と詳細釣り合いの原理,連続化とFokker-Planck方程式,定常核生成率
BDモデルの定常解を使って定常核生成率を計算できる.
このような古典核生成理論は最近の高度なアルゴリズムを用いた大規模シミュレーションでも基本的に正しいことが示されている.
ただし,現実にはクラスターの形が球形とは限らずに広い分布を持つことが,定量的な不一致の原因のようである.
講義はあと2コマできそうなので,連続体モデルの界面の運動と相転移の後期過程の理論の紹介をするつもり.
きょうも雨で出足は悪く暑苦しい.
出席者29名(素粒子宇宙10名,物質理学19名).
2007年7月3日
第13回.Fokker-Planck方程式での平衡分布の実現,平均値の時間変化,1次相転移と核生成の必要性,気体中の液体クラスターの成長と縮小,クラスターの分布関数
連続相転移の場合には,相転移の過程は比較的単純だが,秩序変数の不連続変化を実現しなくてはならい1次相転移は,そのダイナミクスが面白い.
巨視的な体系がいっぺんに別な状態にうつることはできないし,抜け道を探しても,自由エネルギーを下げるような状態変化では安定相へは移れない.
熱ゆらぎによって自由エネルギーの山を越えなくてはいけない.
Becker-Doeringモデルはこのプロセスを表現し,相転移の後期過程まで記述可能な優れたモデルである.
雨のせいか出席者が減って最少に.
出席者25名(素粒子宇宙9名,物質理学16名).
2007年6月26日
第12回.Langevin方程式の一般化,場に対する運動方程式,保存系の運動,ランダム力とその相関,Fokker-Planck方程式の導出
現実問題としてNewton方程式やSchroedinger方程式から巨視的な物理量の時間発展を終えることは皆無に近いから,熱運動も取り入れた時間変化を表す運動方程式としてLangevin方程式は非常に汎用性がある.
Langevin方程式はひとつのモデル系だが,正しい熱平衡状態を実現できるように作ってある点は重要である.
統計力学では熱平衡を作れないモデルも多いが,熱平衡はある意味でモデルの健全さを保証する.
梅雨になって蒸し暑いのにうんざり.講義が終わると体がべたついて気持ちが悪い.
出席者31名(素粒子宇宙9名,物質理学22名).
2007年6月19日
第11回.Brown運動,Einstein-Stokesの関係式,1次元のLangevin方程式,位置の変化と拡散,拡散係数と速度相関関数
1905年のEinsteinの論文の紹介とLangevin方程式を使ってBrown運動の解説.
細かい計算を飛ばしたのでずいぶん進んだ.
今日をふくめて残りは5回だから,講義ノートの中から題材を選択して能率よくやらないといけない.
計算の細部を省略することが出てくると思うが,講義ノートには詳しく書いてあるので,自分でフォローしておくこと.
Paul Langevinは常磁性の統計理論でも名が残る.
第2次大戦中はナチの収容所から脱出し,レジスタンスに加わった.またMaria Curieとの恋愛事件も有名.
出席者32名(素粒子宇宙11名,物質理学21名).
2007年6月12日
第10回.誘電率と電荷対の分布関数の関係,Kosterlizのくりこみ群方程式.KT転移の様子
この種の相転移の本質を最初に明らかにしたのはBerezinskii(1971).
KosterlitzとThoulessの名を冠してKT転移と呼ばれることが多いが,BKT転移と呼ぶべきでしょう(ノートも直そうか).
KT転移のくりこみ群理論の話を終えて,平衡相転移の話は一応おしまい.
次回からは非平衡系の話しに入ります.
明日は教室講演会で話さなくてはいけない.
うまいビールを飲むためにはもう少し準備をしたいが,午後は4年生のセミナー.
出席者29名(素粒子宇宙9名,物質理学20名).
2007年6月5日
第9回.2次元XYモデルの渦,2次元流体の速度ポテンシャルと流れ関数,渦のエネルギー,2次元クーロン気体との対応
いろいろな系の近似的な同等性は統計物理学ではよく利用される.
とくに平衡統計力学では系のダイナミクスは問題にならエネルギースペクトルだけで話が済むので応用範囲は広い.
レポートの課題を下のように出します.試験期間や夏休みを利用して書いてください.成績はこのレポートと出席状況をもとにつけます.
出席者31名(素粒子宇宙9名,物質理学22名).
2007年5月29日
第8回.2次元IsingモデルのMigdal変換(つづき),臨界指数の決め方,クロスオーヴァ,連続対称性を持つ系の特徴.
くりこみ群の計算はたいていの場合近似的にしか遂行できないが,臨界現象の小本的なイメージを与えてくれる.
1982年のノーベル物理学賞はくりこみ群を使った相転移の研究でK. Wilsonに与えられた.
講義終了のときに見たらマイクの電池がなくなっていた.マイクが働くなっていたら言ってください.
出席者30名(素粒子宇宙11名,物質理学19名).
2007年5月22日
第7回.臨界現象の実験,ブロックスピン変換,くりこみ群の考え方,1次元Isingモデルでのくりこみ群,2次元IsingモデルのMigdal変換
出席者が(とくに講義開始時の)急に減ったようだ.
たくさんの講義を聴いて/やってみて感じるのだが,講義は最初から聴くことが大切.
はじめに前回の復習を軽くやることで流れが頭の中に入る.
途中からだと流れがなかなかつかめない.
非常に専門的な講義でない限り内容はどこかに似たようなことが書いてあるのだから,全体の鳥瞰をかんたんに得られることが講義の特長だと思う.
そのあとで,詳しく正確に理解するために書いたものを読み,自分でやってみるのがよい.
出席者29名(素粒子宇宙8名,物質理学21名).
2007年5月15日
第6回.臨界指数,ギンツブルグの条件,スケーリング仮説
ヘリウム,超伝導,気液臨界点などの実験データを見せた.
ヘリウム超流動転移の比熱はだいたい対数発散(α=0)だが,詳しく調べると発散せずに頂点を持つ.
飽和蒸気圧転移点直下での臨界指数の実験値はα=-0.0129,3DXYモデルでの理論値はα=-0.016だそうだ.
出席者34名(素粒子宇宙11名,物質理学23名).
2007年5月8日
第5回.物理量の熱力学的ゆらぎ,局所秩序変数の関数としての自由エネルギー,相関関数,相関長の発散
ランダウ自由エネルギーを使っての相関関数の計算を丁寧にやった.
少々技術的なことも多いが,基本的なことなので眺めるだけではなく一度丁寧に計算を折ってみることが大事.
講義ノートに細かいミスプリ類が幾つか見つかったのでそのうち訂正します.
出席者38名(素粒子宇宙14名,物質理学24名).
2007年5月1日
第4回.相転移の現象論(ランダウ理論).熱平衡でのゆらぎ,Gauss分布と熱力学的現象論(一部来週へ).
多変数のガウス分布の計算を省略したので,丁寧にやったにもかかわらず,ほぼ予定通り進んだ.
ランダウ理論は,ここの結果だけを見ると平均場近似と同じく誤った結果した出てこないが,秩序変数の関数としての自由エネルギーという概念の拡張を含んでいる.
また,臨界現象の普遍性の根拠がここにあり,ゆらぎを取り込んだWillsonのくりこみ理論もここから出発する.
出席者35名(素粒子宇宙13名,物質理学22名).連休の中日で,しかも雨.出席者が少ないかと思いきや最多でした.
2007年4月24日
第3回.平均場理論での臨界指数,いろいろな相転移と秩序度.
前回飛ばした平均場近似での臨界指数の計算をざっとやったら案の定時間が不足して,ランラウ理論はまったくできずに終わる.
このままではどんどん遅れが拡大するので,次回はメリハリをつけて技術的なことだけの部分は飛ばすことにしよう.
出席者34名(素粒子宇宙10名,物質理学24名).今日始めて出席したM2のS君,履修登録をしないといけませんよ.
2007年4月17日
第2回.Isingモデルの統計力学,Isingモデルの平均場理論,平均場理論での臨界指数.
例によって丁寧に説明すると後半をやる時間が不足.
平均場近似での臨界指数の計算がほとんどできず結果のみ紹介.
まあただの展開計算だが一度は自分で手を動かしてやるべきものだ.
講義ノートには丁寧に書いてあるので必ず復習しておいてください.
出席者32名(素粒子宇宙13名,物質理学19名).
2007年4月10日
第1回.講義の進め方の説明.相転移の次数,相図とClausius-Clapeyronの関係式,水,ヘリウム3,4の相図.
昨年までおいたあった液晶プロジェクターがなくなっていたので少々あわてたがT君6階からが持ってきてくれた.
今年はノートパソコンを変えたのでやりやすい.
マイクは使わなかったが,使ったほうがよいかもしれない.いつも忘れる.
出席者32名(素粒子宇宙15名,物質理学17名).昨年に比べ物質理学専攻の出席者が10名も少ない.
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