(最終更新: 2003/04/17)

講義: 統計物理学W (前期,4年生)


単位は出席とレポートをもとに出します. A4の用紙に書いてB545の扉にあるレポート入れにて提出してください.

レポート No.3 (出題 2002/06/27,提出期限 2002/07/08.pdf file 30kB) 
2(e)の問題 < mimj > は < dmidmj > だとおもってもかまいません. 自由エネルギーで簡単に書けるのはこっちですから.

解答例(削除)

レポート No.2 (出題予定 2002/05/16,提出期限 2002/05/27.pdf file 29kB) 
訂正: レポートの問題に誤りがありました. 2番目のlTの式は分子と分母が逆です. またこれは古典理想気体ですのでTrace は位相空間の積分です.

レポート No.1 (出題 2002/04/18,提出期限 2002/04/30.pdf file 22kB) 
訂正: レポートの問題に誤りがありました. (3)式の左辺は r(t) です(上のは修正済み). また指数関数の肩の量はプランク定数で割っておいてください.
解答例(削除)

理学部情報サテライト室からpdfファイルを見るために PDFファイルの設定の仕方(名大理学部編) (新里氏作成の案内)


授業についての質問,意見などは


講義日誌(時間反転)

Onsager と 久保(AIPより)
Kubo Onsager
2002年7月18日
 第13回,線形応答理論. 物理量の緩和が自己相関関数で決まること,それと応答関数との関係. 本来なら線形応答の話は2時間かけるのだが,今日で最後. 応答関数の虚部がエネルギー散逸を表すということと揺動散逸定理の話が残ってしまった. 自分で勉強しておいてください. 確率過程の話もまったくしなかったし,今年は(も)ゆっくりていねいにやりすぎたかと少し反省.
系の巨視的な緩和過程が,自発的な揺らぎの消失と同じ法則に従うという考えはOnsager(写真左)によって示された. 線形応答理論は,中野藤生(名大名誉教授)によって電気伝導に拡張され,久保亮五(写真右)によって,一般理論として定式化された.
 出席24名.

授業後の質問:  摂動展開の計算が分からない.
答え: 分母を次のように書けばできます. (ここでは H0 の添え字の0を省略)
[Tr e-bH(1+bhM)]-1 ={(Tr e-bH) [1+(Tr e-bHbhM)(Tr e-bH)-1]}-1
=(Tr e-bH)-1 [1-(Tr e-bHbhM)(Tr e-bH)-1]

追記 (2002/7/19): 5月23日の講義で剛体球系の相転移の話をしましたが,山梨大学の豊木さん(中野研究室の出身)がシミュレーションをウェブに乗せていることを知りました.



2002年7月11日
 第12回.ランダウの相転移理論. 東京出張で昨夜帰る予定が台風で果たせず,早朝に東京を発って講義に駆けつける.
来週でこの講義も終わり.授業内容予定と比べると §6. 線形応答理論 と§7. 拡散現象と確率過程 が残ってしまった. どちらかから1時間分だけやります. もし希望があれば連絡してください.
 出席28名.

訂正: 授業の内容に誤りがありました. 感受率はc=1/rまたはc=1/2rですから T=Tc での発散は 1/|T-Tc| に比例しています. ルートは余計です. 相関距離は x ∝1/|T-Tc|1/2.



Bordeaux wine Bourgogne wine
2002年6月27日
 第11回.秩序状態を統計力学的にどのように記述するか,具体例としての磁性体の相転移. 空間的に非一様な外場をかけて自由エネルギーをもとめ,それからルジャンドル変換によって磁化密度の汎関数としての自由エネルギーを定義する. 一般化した感受率がこれらの自由エネルギーの2階の汎関数部分として求められる. XYモデルでの磁化の関数としての自由エネルギーの形は,すり鉢-->Bourgogne葡萄酒壜底-->Bordeaux葡萄酒壜底と変化する.
 出席28名.教育実習が終わり少し回復.
 授業の際言い忘れたが,来週は集中講義のため休講とします. 集中講義をできるだけ受講してください. レポートは7月8日(月)までに出してください.



Flory(Nobel財団の写真).
Flory
2002年6月20日
 第10回.フラクタル構造を持つ高分子の話と秩序状態の例としての磁気相転移の話の序論. 実在高分子のモデルとしてのself-avoidingランダム・ウォーク. Floryの理論の説明.
 出席26+2名.

授業後の質問:  < ninj > =(1/3)dij となるのはどうしてか?
答え: たとえば極座標で,nx = sinq cosf , ny = sinq sinf , nz=cosq として,立体角で平均してみれば分かります. そのあとで意味をじっくり考えてください.



2002年6月13日
 第9回.フラクタル構造の話. 2回目のレポートの解答について簡単に解説. フラクタルとは何か,フラクタル構造を持つ凝集体の例,理想鎖高分子の統計的な扱いについて説明. 実在の高分子のところまで話す予定だったが,サービスしてレポートの解説をしたり,いろいろな図を見せていたら時間がなくなってしまった. 来週補足をします.
 名大祭も終わり,教育実習の季節で出席者も減少傾向.出席25+2名.



2002年5月30日
 第8回.結晶と液晶の構造とX線の構造因子の話.出席30+1(?)名.
 携帯電話を持たない学生の数(昨年より1人へって1)より,液晶が何かを知っている学生の数が少ない(これは昨年と同じく0). これだけ液晶ディスプレイの普及した時代に,物理学科の卒業生が気体,液体,固体と並ぶ(?)液晶を知らないというのは少し問題があるように思う. そうは言うものの,最近の新技術の開発速度はすさまじく,その技術的な原理すらまったく分からないことも多い. 授業では液晶ディスプレイに偏向板を使うと説明したが「偏向板不要型の技術」というのが開発されているそうである. 電圧をかけて起きる液晶の相転移を利用しているようだから講義で話したことも理解の役に立つでしょう.
 昔なら物理をしっかり勉強していればいろいろな技術の原理くらいは想像がついたように思うが,もうとても追いつけそうない. 少し悲しい事態である.
 来週は名大祭のためお休み.レポートは6月7日までに出してください.



後ろに立っているのがAlder.
Alder(back)
2002年5月23日
 第7回.気体,液体,固体の相図と液体の2体分布関数の話. 2体分布関数は粒子間の有効相互作用ポテンシャルと関係している. 出席34+2(?)名.
 おまけとして剛体球系の相転移を説明し2次元の模型を回覧した. 授業のあとで粘っていたK君が無欠陥の結晶作成に成功.

訂正: レポートの問題にまた誤りがありました. 2番目のlTの式は分子と分母が逆です(すぐ分かりますね?). ついでに言うと,これは古典理想気体ですのでTrace は位相空間での積分です.

追記 (2002/6/13): 剛体球系の相転移の論文は B. J. Alder and T. E. Wainwright, `Phase transition in elastic disks',Phys. Rev. 127, 359-361 (1962).
追記 (2002/5/20): 確定受講者名簿が事務から届きました.次の人は,名簿に名前がありませんので,必要な場合には事務室に連絡してください. 川口涼,松下雄樹,新里隆.

2002年5月16日
 第6回.汎関数微分を使って相関関数を計算する話の続き. グランドカノニカル分布の話とLegendre変換によって独立変数を外場から < n(r)> に変える方法. 後半は物質の構造とそれが < n(r)> や相関関数にどのように反映されるかの例として,気体,液体の説明に入った.
 今日は1時間目に物理学概論の講義があり時間の余裕がなく,出席をとり忘れた. 座席はいっぱいに埋まっていたから40名弱でしょう. 授業が終わってから指摘され出席をとったので,名前を書かなかった人は来週の出席表にその旨書いておいてください.
 2つ目のレポートを出題.締め切りをS君につられて6月7日としましたが,上を見ると2002/05/27と書いてあるので,可能な人は27日までに出してください.

授業後の質問: 密度が圧縮率の式を導くときには < n > ではなく n と書かれていたが...
答え: 熱力学の関係式を書くときは密度は常に平均の意味なので < n > とは書きませんでしたが同じものです.

授業後の質問: 強い斥力のポテンシャルの形がどうでもいいといったが...
答え:  s の近くなら計算できるはずです. 正確な関数形がどうなるかは知りません. 再度強調しておきますが,この斥力はクーロンの反発力ではありません. 同種粒子の波動関数の対称性から要求される量子力学的な効果です.



適当な肖像がないので,今回は彫刻を. 誰の作品かわかりますか?
Vangi

2002年5月9日
 第5回.汎関数微分の説明とそれを使って密度の期待値や相関関数を計算する形式論.
 連休明けだというのに出席者は最高の39(+1)人. 講義をやる側としてはやる気が失せずに大変ありがたい.
もうレポートを出す人は出したと思うので解答例を置いておきます.



2002年5月2日
 第4回.レポートの解説と相関関数の説明. 物質内の構造を見るには散乱実験が重要な手段であり,散乱断面積は原子のポテンシャルと構造関数の積になっている(ここまでは前回話した). 構造関数,構造因子,密度相関関数,密度ゆらぎの相関関数,2体分布関数などの関係.
 連休の間でもあり出席者は34(+1)人. まだレポートの出ていない人が数人いますが,提出すれば受け付けます(出さないよりまし).

授業後の質問: dn とはどういう意味か?
答え: dn は密度のゆらぎで dn(r) = n(r) - < n(r)> が定義です.

授業後の質問: 「一様な系では r - r' の関数だから云々」がよくわからない.
答え: 説明があいまいだったので反省しています.次回に説明します.



構造因子を導入したのは van Hove です.
van Hove

2002年4月25日
 第3回.カノニカル分布の続き: ゆらぎについての公式と統計力学と熱力学の関係の復習: 物理量の平均値はボルツマン因子でそれと対になって出てくるパラメタ自由エネルギーを微分し,ゆらぎは2回微分すれば求められる. 統計力学の自由エネルギーの定義で統計和を最大値で評価したものと熱力学の定義式が一致する.
 出席者は39人. 次の3名の人は仮受講者名簿には名前がありません:川口涼,松下雄樹,宮本清悟. 単位がほしい場合には必ず履修登録をしておいてください. 来週の講義は連休に挟まれているのでやめたい人が多かったらどうしようかと迷っていたが,やめてほしいという人がいなかったのでやります.

授業の訂正(1): エネルギー状態密度とエントロピーの関係は D(E) = eS(E)/kB です.kB が抜けていました.

授業の訂正(2): 理想気体で I(q) は ri = rj で 指数関数が q の値によらず1になるので,I(q) = N です. dq0 はいりません.

授業後の質問: D(E) = Sn d(E-En) が何故黒板に書いたような関数になるのか?
答え: D(E) についてのこの表式は形式的なものでこのまま書けば滑らかな関数ではなくデルタ関数がぎっしり並んだものです. 実際的に意味のあるのはこれを滑らかにならした状態密度で,これは指数関数的に滑らかかつ急速に増大します.

皆さん,ここに書かれた数式は読めていますか? Netscapeのver.4やInternet Explorerは大丈夫そうですがNetscapeのver.6ではギリシア文字が表示されないようです. どうしたらよいか知っている人がいたら教えてください.

追記(02/04/26):レポートについて補足しておきます. 2.で(2)式を書いておいたのは lnr や eiHt の意味をはっきりさせるためです. Bloch方程式の証明にもこれが必要です. (2)を使って f(e-iHtAeiHt) = e-iHt f(A) eiHt を証明しておくと3.で役に立ちます.

Bloch と Gibbs
Gibbs
Bloch
2002年4月18日
 第2回.カノニカル分布の復習で密度行列やトレースを使った定式化. 統計力学の基礎は,講義の準備ににまじめに考えだすとわからないことがいろいろある.皆さんも難しいことは先生に聞かず自分で悩んでください.
 出席者は39人でまだあふれている. 出席者の内訳を見ると,素粒子宇宙系の研究室の人19人,物質理学系の人18人,その他2人. レポートの問題が不足してしまい申し訳ありません(プリンタのところに残ってましたので取りに来てもらえれば渡します).

授業後の質問(1): 相互作用があるときとないときとで全系の波動関数はどう違うか?
答え: 相互作用がなければ部分系と熱浴は独立で Y = Si aiyi Sj bjfj と書けますが,相互作用しているときは一般に Y = Sij cij yi fj という形です.

授業後の質問(2): Tr[r |yi> <yi| ] = Sj |cij|2 は何故か?
答え: 先週やった密度行列の定義式 r = Sjk |yk> rkj <yj|, rki = Sj c*ij ckj を使って計算してみてください.

訂正: レポートの問題に誤りがありました. (3)式の左辺は r(t) です. また指数関数の肩の量はプランク定数で割っておいてください.

Landau と von Neumann(AIPより)
von Neumann
Landau
2002年4月11日
 第1回.例年になく出席者が多く,定員30名ほど(?)の教室に入りきらずA4南講義室に緊急避難. (空いているのなら,いつもA4南を使うようにします) この部屋は明るくてよいのだが,天井に邪魔物があって黒板が見にくい. また黒板の扱いを慎重にしないと壊しそうになる. 出席者は39人.例年30人を越える事はまれなのでこれがいつまで続くのか? とくに素粒子宇宙系の人たちできるだけがんばってくださいね. 今日は密度行列の話で統計力学はまだ出てこない. この講義はもう何度かやったので無駄が省ける分新しい内容を少しずつ入れるようにしたい.
 授業後,黒板の式でいつの間にかr とA の順序が入れ替わっているとの指摘があったが,対角和は Tr(ABC)=Tr(BCA) なので入れ替えてもかまわないのです.
 密度行列を導入したのは Landau と von Neumann です.

追記:次回からの講義はA4南講義室がふさがっているのでA4北講義室で行います. 机は36人分しかありません(椅子はある).早い者勝ちです.




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