2002年5月23日
第7回.気体,液体,固体の相図と液体の2体分布関数の話.
2体分布関数は粒子間の有効相互作用ポテンシャルと関係している.
出席34+2(?)名.
おまけとして剛体球系の相転移を説明し2次元の模型を回覧した.
授業のあとで粘っていたK君が無欠陥の結晶作成に成功.
訂正: レポートの問題にまた誤りがありました.
2番目のlTの式は分子と分母が逆です(すぐ分かりますね?).
ついでに言うと,これは古典理想気体ですのでTrace は位相空間での積分です.
追記 (2002/6/13): 剛体球系の相転移の論文は B. J. Alder and T. E. Wainwright, `Phase transition in elastic disks',Phys. Rev. 127, 359-361 (1962).
追記 (2002/5/20): 確定受講者名簿が事務から届きました.次の人は,名簿に名前がありませんので,必要な場合には事務室に連絡してください.
川口涼,松下雄樹,新里隆.
2002年5月16日
第6回.汎関数微分を使って相関関数を計算する話の続き.
グランドカノニカル分布の話とLegendre変換によって独立変数を外場から < n(r)> に変える方法.
後半は物質の構造とそれが < n(r)> や相関関数にどのように反映されるかの例として,気体,液体の説明に入った.
今日は1時間目に物理学概論の講義があり時間の余裕がなく,出席をとり忘れた.
座席はいっぱいに埋まっていたから40名弱でしょう.
授業が終わってから指摘され出席をとったので,名前を書かなかった人は来週の出席表にその旨書いておいてください.
2つ目のレポートを出題.締め切りをS君につられて6月7日としましたが,上を見ると2002/05/27と書いてあるので,可能な人は27日までに出してください.
授業後の質問: 密度が圧縮率の式を導くときには < n > ではなく n と書かれていたが...
答え: 熱力学の関係式を書くときは密度は常に平均の意味なので < n > とは書きませんでしたが同じものです.
授業後の質問: 強い斥力のポテンシャルの形がどうでもいいといったが...
答え: s の近くなら計算できるはずです.
正確な関数形がどうなるかは知りません.
再度強調しておきますが,この斥力はクーロンの反発力ではありません.
同種粒子の波動関数の対称性から要求される量子力学的な効果です.
適当な肖像がないので,今回は彫刻を.
誰の作品かわかりますか?
2002年5月9日
第5回.汎関数微分の説明とそれを使って密度の期待値や相関関数を計算する形式論.
連休明けだというのに出席者は最高の39(+1)人.
講義をやる側としてはやる気が失せずに大変ありがたい.
もうレポートを出す人は出したと思うので解答例を置いておきます.
2002年5月2日
第4回.レポートの解説と相関関数の説明.
物質内の構造を見るには散乱実験が重要な手段であり,散乱断面積は原子のポテンシャルと構造関数の積になっている(ここまでは前回話した).
構造関数,構造因子,密度相関関数,密度ゆらぎの相関関数,2体分布関数などの関係.
連休の間でもあり出席者は34(+1)人.
まだレポートの出ていない人が数人いますが,提出すれば受け付けます(出さないよりまし).
授業後の質問: dn とはどういう意味か?
答え: dn は密度のゆらぎで dn(r) = n(r) - < n(r)> が定義です.
授業後の質問: 「一様な系では r - r' の関数だから云々」がよくわからない.
答え: 説明があいまいだったので反省しています.次回に説明します.
構造因子を導入したのは van Hove です.
2002年4月25日
第3回.カノニカル分布の続き:
ゆらぎについての公式と統計力学と熱力学の関係の復習:
物理量の平均値はボルツマン因子でそれと対になって出てくるパラメタ自由エネルギーを微分し,ゆらぎは2回微分すれば求められる.
統計力学の自由エネルギーの定義で統計和を最大値で評価したものと熱力学の定義式が一致する.
出席者は39人.
次の3名の人は仮受講者名簿には名前がありません:川口涼,松下雄樹,宮本清悟.
単位がほしい場合には必ず履修登録をしておいてください.
来週の講義は連休に挟まれているのでやめたい人が多かったらどうしようかと迷っていたが,やめてほしいという人がいなかったのでやります.
授業の訂正(1): エネルギー状態密度とエントロピーの関係は D(E) = eS(E)/kB です.kB が抜けていました.
授業の訂正(2): 理想気体で I(q) は ri = rj で 指数関数が q の値によらず1になるので,I(q) = N です.
dq0 はいりません.
授業後の質問: D(E) = Sn d(E-En) が何故黒板に書いたような関数になるのか?
答え: D(E) についてのこの表式は形式的なものでこのまま書けば滑らかな関数ではなくデルタ関数がぎっしり並んだものです.
実際的に意味のあるのはこれを滑らかにならした状態密度で,これは指数関数的に滑らかかつ急速に増大します.
皆さん,ここに書かれた数式は読めていますか?
Netscapeのver.4やInternet Explorerは大丈夫そうですがNetscapeのver.6ではギリシア文字が表示されないようです.
どうしたらよいか知っている人がいたら教えてください.
追記(02/04/26):レポートについて補足しておきます.
2.で(2)式を書いておいたのは lnr や eiHt の意味をはっきりさせるためです.
Bloch方程式の証明にもこれが必要です.
(2)を使って f(e-iHtAeiHt) = e-iHt f(A) eiHt を証明しておくと3.で役に立ちます.
Bloch と Gibbs
2002年4月18日
第2回.カノニカル分布の復習で密度行列やトレースを使った定式化.
統計力学の基礎は,講義の準備ににまじめに考えだすとわからないことがいろいろある.皆さんも難しいことは先生に聞かず自分で悩んでください.
出席者は39人でまだあふれている.
出席者の内訳を見ると,素粒子宇宙系の研究室の人19人,物質理学系の人18人,その他2人.
レポートの問題が不足してしまい申し訳ありません(プリンタのところに残ってましたので取りに来てもらえれば渡します).
授業後の質問(1): 相互作用があるときとないときとで全系の波動関数はどう違うか?
答え: 相互作用がなければ部分系と熱浴は独立で
Y = Si
aiyi
Sj bjfj
と書けますが,相互作用しているときは一般に
Y = Sij
cij yi fj
という形です.
授業後の質問(2): Tr[r |yi> <yi| ] =
Sj |cij|2
は何故か?
答え: 先週やった密度行列の定義式
r = Sjk
|yk>
rkj
<yj|,
rki =
Sj c*ij
ckj
を使って計算してみてください.
訂正: レポートの問題に誤りがありました.
(3)式の左辺は r(t) です.
また指数関数の肩の量はプランク定数で割っておいてください.
Landau と von Neumann(AIPより)
2002年4月11日
第1回.例年になく出席者が多く,定員30名ほど(?)の教室に入りきらずA4南講義室に緊急避難.
(空いているのなら,いつもA4南を使うようにします)
この部屋は明るくてよいのだが,天井に邪魔物があって黒板が見にくい.
また黒板の扱いを慎重にしないと壊しそうになる.
出席者は39人.例年30人を越える事はまれなのでこれがいつまで続くのか?
とくに素粒子宇宙系の人たちできるだけがんばってくださいね.
今日は密度行列の話で統計力学はまだ出てこない.
この講義はもう何度かやったので無駄が省ける分新しい内容を少しずつ入れるようにしたい.
授業後,黒板の式でいつの間にかr とA の順序が入れ替わっているとの指摘があったが,対角和は Tr(ABC)=Tr(BCA) なので入れ替えてもかまわないのです.
密度行列を導入したのは Landau と von Neumann です.
追記:次回からの講義はA4南講義室がふさがっているのでA4北講義室で行います.
机は36人分しかありません(椅子はある).早い者勝ちです.